タスクが山積みになる人の共通点と、朝の1分でできる段取り

IT企業で人材開発を担当している三浦です。
新人研修と若手のフォロー研修を企画し、自分でも講師として登壇するようになって6年目になります。

研修のあとの個別面談で、いちばん多い相談は「仕事が山積みで、何から手をつけていいか分からない」です。
私にも覚えがあります。
下の子が生まれて時短勤務に切り替えた最初の年は、16時半の退社時刻が近づくたびに、手つかずの仕事を前にして焦っていました。

仕事の量はそれほど変わっていないのに、朝の始め方を変えたら、仕事の溜まり方はかなり落ち着きました。
今の段取りは、パソコンを開いてから1分で終わります。

この記事では、研修や面談で見てきた「タスクが山積みになる人の共通点」と、朝の1分でできる段取りの手順をまとめます。
共通点には、それを裏づける研究データも添えました。

タスクが山積みになるのは「量」だけのせいではない

厚生労働省の令和7年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄がある労働者は67.5%でした。
その内容でいちばん多かったのは「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」で、どちらも39.5%です。
女性に限ると「仕事の量」は44.6%まで上がります。

仕事量そのものが多すぎるなら、本来は上司と配分を相談するべき話です。
個人の工夫で何とかできる範囲を超えていることもあります。

それでも研修で同じ課題を出すと、同じ量でも溜まる人と溜まらない人に分かれます。
差が出るのは、能力より「仕事の始め方」でした。
溜まる人ほど、朝いちばんに受信メールを開き、その日の順番を決めないまま走り出しています。

タスクが山積みになる人の共通点

面談で話を聞いていると、共通点はおおむね4つに絞れます。
どれも性格の問題というより、仕事の進め方のくせです。

全体量を見る前に、目の前の仕事から手をつける

山積みになっている人に「今日やることを全部挙げてみて」と聞くと、すぐには答えられないことがほとんどです。
メールやチャットが来た順に片づけていくので、自分の仕事にいつ取りかかれるのかが見えていません。

目の前の仕事をこなしている間は、手が動いているので働いている実感はあります。
ところが夕方に振り返ると、期限の近い仕事が手つかずのまま残っている。
時短勤務になったばかりの私が、まさにこの状態でした。

割り込みのたびに「やりかけ」が増えていく

カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マーク氏らが2005年に発表した職場での作業の中断についての研究があります。
24人の働き方を観察したところ、作業のまとまりの57%が途中で中断されていました。
中断された作業を同じ日に再開するまでには平均25分26秒かかり、その間に平均2.26件の別の作業をはさんでいたそうです。

話しかけられたり、チャットが届いたりするたびに、やりかけの仕事が1つずつ増えていきます。
山積みに見える仕事のかなりの部分は、こうした「やりかけ」です。
どこまで進めたかを思い出すだけでも時間がかかるので、片づくペースはさらに落ちます。

やることを頭の中だけで抱えている

「書き出すと量が目に見えて焦るから」と、タスクを頭の中で管理している人もいます。
気持ちは分かりますが、頭の中に抱えたままのほうが集中を削られやすいようです。

フロリダ州立大学のマシカンポ氏とバウマイスター氏が2011年に発表した未完了の目標と計画づくりについての研究では、やり残した目標があると、関係のない作業中にもそのことが頭に浮かび、別の課題の成績まで下がりました。
その目標について具体的な計画を立ててもらうと、こうした影響は消えたといいます。
「いつ、どうやるか」を決めた時点で、頭はいったんその仕事を手放せるわけです。

終わるまでの時間を短く見積もる

カナダの心理学者ビューラー氏らの1994年の研究では、卒業論文に取り組む学生37人が、提出までにかかる日数を平均33.9日と予測しました。
実際にかかったのは平均55.5日で、予測どおりに終えられた学生は29.7%だけでした。

仕事でも同じことが起きます。
「この資料なら30分」と思った仕事に1時間かかれば、そのぶん次の仕事が後ろへ押し出されます。
毎日これが続くと、終わらなかった仕事が翌日に持ち越され、山がだんだん高くなっていきます。

4つの共通点と、それぞれに効く朝の行動を表にまとめました。

共通点朝の1分でできること
目の前の仕事から手をつける今日使える時間を先に数える
割り込みで「やりかけ」が増える最初に手をつける1つを決め、戻る場所を作る
頭の中だけで抱えている付箋に書き出して、いつやるかを決める
時間を短く見積もる前回かかった時間を思い出してから見積もる

朝の1分でできる段取り

私の段取りは、パソコンを開いてメールを見る前の1分で終わります。
手元に付箋を1枚用意して、20秒ずつ3つのことを決めます。

20秒で今日使える時間を数える

予定表を開いて、会議や打ち合わせを除いた残りの時間を数えます。
私の勤務は9時半から16時半なので、昼休みを除くと6時間です。
会議が合わせて2時間ある日なら、自分の仕事に使えるのは4時間になります。

この数字を付箋のいちばん上に書いておくだけで、引き受けられる量の感覚が変わります。
4時間しかない日に、半日かかる仕事を2つ入れようとは思わなくなりました。

20秒で「最初の1つ」を決める

今日が期限のものと、明日の午前が期限のものを付箋に書き出します。
そのうえで、メールを開く前に手をつける仕事を1つだけ決めて、印をつけます。

全部の順番を決めようとすると、1分では終わりません。
決めるのは最初の1つだけで十分です。
途中で割り込みが入っても、付箋に戻る場所が書いてあれば、次に何をするかで迷わずに済みます。

見積もりを書くときは「前に同じような仕事をしたとき、何分かかったか」を一瞬だけ思い出します。
これだけで、さきほどの楽観的な見積もりはかなり防げます。

20秒で重い仕事を午前に置く

いちばん頭を使う仕事を、午前のどの時間にやるか決めて、予定表に入れてしまいます。
研修資料の構成を考えるなら10時半から11時半、という具合です。

前述のマーク氏は、カリフォルニア大学アーバイン校のインタビュー記事で、多くの人は午前の中ごろから遅めの時間と、午後の中ごろから遅めの時間に集中のピークが来ると話しています。
朝型の人はピークが早めに、夜型の人は遅めにずれるそうです。
いちばん難しい仕事や創造的な仕事は、そのピークに合わせて計画するべきだという考えです。

朝のうちに時間を押さえておかないと、その時間帯はメールの返信や急ぎの依頼で埋まっていきます。
予定表に入れておけば、打ち合わせの依頼が来たときも「その時間は埋まっています」と言えます。

付箋の書き方の例

実際の付箋は、たとえばこんな形です。

使える時間 4時間
◎ 研修アンケートの集計(今日締切、45分、15時までに)
  新人面談の日程調整(明日午前まで、15分)
重い仕事 10時半〜11時半に研修資料の構成

研修では、これを「パソコンを開いたら、メールより先に付箋を書く」という決まりごととして伝えています。
「もし〜したら、〜する」の形で行動のきっかけを決めておく計画は「実行意図」と呼ばれます。
心理学者のゴルヴィツァー氏とシーラン氏が94件の研究をまとめた2006年の分析では、こうした計画が目標の達成に中程度から大きな効果を持つと報告されています。

日中に山を増やさない、頼まれごとの受け方

朝に段取りを決めても、日中に頼まれごとを次々と引き受けていれば、山はまた高くなります。
面談で「断れないんです」と話す若手は多いのですが、私は無理に断る練習はすすめていません。
代わりに伝えているのは、受ける前に「期限」と「かかる時間」を確かめることです。

頼まれた仕事が山積みにつながるのは、期限があいまいなまま、とりあえず全部を「急ぎ」として抱えてしまうからです。
実際に期限を聞いてみると、「来週でいいよ」と言われることも少なくありません。
時短勤務の私にとって、この確認はほぼ毎日欠かせない一言になっています。

研修で紹介している言い方を、場面ごとにまとめました。

場面言い方の例
期限が分からない「いつまでに必要ですか?」
今日中は難しい「今日は16時半までなので、明日の午前中でも間に合いますか?」
今は手が離せない「いま締切の作業中なので、11時半にこちらから声をかけてもいいですか?」
量が読めない「30分くらいで終わりそうですか?もっとかかりそうなら、先に中身を見せてください」

声をかけてから相談したいときも、同じ考え方が使えます。
「ちょっと時間ある?」とだけ聞かれると、相手は何分取られるのか分かりません。
「5分だけ、研修日程の件で相談させてください」と、時間と用件を先に伝えるようにしています。

引き受けた仕事は、その場で付箋の下のほうに書き足します。
朝に数えた「使える時間」と見比べれば、今日やるのか明日に回すのかを、その場で決められます。

段取りが崩れる日のための考え方

1分で段取りを決めても、トラブル対応が1件入れば、午前の予定は簡単に崩れます。
始めたばかりのころの私は、崩れるたびに「今日もだめだった」と落ち込んでいました。

そこで取り入れたのが、最悪の日を先に想定しておくという考え方です。
林健太郎さんの新刊を取り上げたライフハッカー・ジャパンの書評で、本の中の「ハイドリーム・ロードリーム」という手法が紹介されています。
「こうなったら最高」という状態と「こうなったら最悪」という状態を両方想定しておき、状況が変わっても慌てないようにする方法です。
面倒ならロードリーム(最悪の想定)だけでもいい、とされています。

私は付箋の端に「最悪:午前が全部つぶれる → アンケート集計だけは守る」と1行書くようにしました。
最悪の日でも守る1つが決まっていると、予定が崩れた日でも気持ちを立て直しやすくなります。
全部できなくても、その1つが終わっていれば、その日は合格です。

この段取りを見直すきっかけになった1冊

研修のネタ探しで読んだのが、エグゼクティブ・コーチの林健太郎さんの新刊です。
2026年10月13日に明日香出版社から出ました。
林さんは大手企業などで延べ2万人以上のリーダーを指導してきた方で、『否定しない習慣』シリーズの著者でもあります。

紹介文には「頼まれた仕事を断れず、気づけばタスクが山積みに……」という一文があります。
こうした悩みの多くは能力の問題ではなく、「1分」の使い方が決まっていないことが原因だ、というのが本の出発点です。
朝の段取りから先延ばし対策、会議や伝え方、自分のケアまで、6章40項目で扱っています。
章ごとの項目は林健太郎さんの『仕事が速い人が「この1分」でやっていること』を紹介している出版社のページで確認できます。

読んですぐに試したのは、作業を始めるときにスマホのタイマーで1分をかけ、1分たったら続けるか別の作業に移るかを自分に問う方法です(35〜36ページ)。
気の重い仕事でも「1分だけ」なら手をつけられます。
1分後に「このまま続ける」を選ぶ日がほとんどで、最初の一歩がいちばん重いのだと実感しました。

目次には、この記事のテーマに近い見出しもいくつか並んでいます。

  • 「今日が期限のもの」の着手順だけ決める
  • メールを「冷蔵庫」に仕分ける
  • おっくうな仕事は1分で分解する
  • 「ちょっと時間ある?」をやめる

編集部のメッセージには「全部を完璧にやらなくて大丈夫です」とあります。
気になった項目を1つ試すところから始められるので、忙しい時期に読む本として手に取りやすい一冊でした。

まとめ

タスクが山積みになる人の共通点は、次の4つでした。

  • 全体量を見る前に、目の前の仕事から手をつける
  • 割り込みのたびに「やりかけ」が増えていく
  • やることを頭の中だけで抱えている
  • 終わるまでの時間を短く見積もる

どれも、朝の1分で段取りを決めておけばかなり防げます。
使える時間を数える、最初の1つを決める、重い仕事を午前に置く。
この3つを付箋1枚に書くだけです。

仕事量そのものが多すぎる場合は、段取りだけでは解決しません。
そのときは付箋に書いた「使える時間」と「やること」を持って、上司に相談してみてください。
数字があると、配分の相談はぐっと切り出しやすくなります。

明日の朝は、メールを開く前に付箋を1枚だけ用意してみてください。