日本保利化成のGRS認証取得について調べてわかったこと
産業専門紙で化学素材メーカーを担当していた頃から、廃プラスチックのリサイクルには関心を持ってきました。萩原真紀と申します。現在はフリーランスのライターとして、環境・サステナビリティ分野や地方の中小製造業を中心に取材・執筆しています。
最近、群馬県太田市にある再生プラスチック企業がGRS認証を取得したという情報を見つけました。GRS認証は、リサイクル製品の品質やトレーサビリティを国際基準で証明する認証プログラムです。繊維業界ではよく耳にしますが、プラスチックリサイクルの分野で取得している企業はまだ多くありません。
元記者として気になったので掘り下げて調べてみたところ、再生プラスチック業界の構造的な変化が見えてきました。この記事では、GRS認証の仕組みから日本のプラスチックリサイクルの現状まで、調べた内容を整理してお伝えします。
目次
GRS認証とは何か
テキスタイルエクスチェンジが運営する国際認証
GRS(Global Recycled Standard)は、アメリカの非営利団体テキスタイルエクスチェンジ(Textile Exchange)が運営する国際認証プログラムです。2011年に運営が始まり、もともとは繊維製品のリサイクル原料を証明する仕組みとして作られました。
現在は繊維だけでなく、プラスチック、紙、金属など幅広い素材に適用されています。環境省の環境ラベル等データベースにも登録されており、国として認知された認証制度です。
テキスタイルエクスチェンジ自体は2002年設立で、40以上の国で800社以上が加盟する組織。GRSのほかにも、RCS(リサイクルドクレームスタンダード)やOCS(オーガニックコンテントスタンダード)など複数の認証プログラムを運営しています。
認証を取得するために求められる条件
GRS認証は、「うちはリサイクルやってます」という自己申告では取れません。複合的な要件を満たす必要があります。
- リサイクル素材の含有率が50%以上であること(ロゴ表示の条件)
- サプライチェーン全体でのトレーサビリティが確保されていること
- 環境面の基準(化学物質管理、エネルギー使用量の報告など)をクリアしていること
- 社会的責任(労働環境の審査など)に関する要件を満たすこと
- 第三者の認証機関による年次監査を受けること
単に再生材料を使っているかどうかではなく、その原料がどこから来て、どのように加工され、最終製品になるまでの一連の流れを追跡・管理していることが求められます。ここがGRS認証の信頼性を支えている部分です。
GRS認証とRCS認証の違いについては、ELEMINISTの解説記事がわかりやすくまとめています。
日本保利化成はどんな会社なのか
廃プラスチックを再生ペレットに変える専門企業
日本保利化成株式会社は、2018年1月に群馬県太田市で設立された会社です。代表取締役は郭保利氏。事業の柱は、工場から出る廃プラスチックを有価で買い取り、再生ペレット(原料として再利用できる粒状の素材)に加工して販売すること。
正式な事業内容は「廃プラスチックのマテリアルリサイクルによる合成樹脂の加工及び原料の国内外販売」です。工場の製造工程で出る端材(PIR:ポストインダストリアルリサイクル)と、使用済み製品から回収される素材(PCR:ポストコンシューマーリサイクル)の両方を取り扱っています。
「一括相談・高精度鑑定・適正再資源化」というワンストップ体制を売りにしており、メーカーが抱える廃棄物処理の課題を一手に引き受ける形のビジネスモデルです。
50種類以上の樹脂に対応できる技術力
調べてみて目を引いたのが、対応できる樹脂の種類の多さです。
ABS、PP、HIPS、PS、PE、PC、PA、PMMA、POMなど50種類以上。汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチック、さらにはスーパーエンプラまで幅広く再生処理が可能とのこと。金属インサート成型品やメッキ品のような「難リサイクル資材」にも対応しているという点は、相応の技術的裏付けがないと実現できない部分です。
樹脂は種類ごとに溶融温度や物性が異なります。それぞれに合った機械選定やペレタイズ条件の設定が必要になるため、対応樹脂が多いということは、それだけ蓄積されたノウハウがあるということです。
太田市の本社工場のほか、茨城県桜川市と滋賀県長浜市にも協力提携工場を持ち、中国にはグループ会社3社(寧波汕鑫進出口有限公司、寧波迪塑進出口有限公司、慈溪迪亜塑料有限公司)を展開。この規模の企業としては、かなり手厚いネットワーク体制です。
業界団体への加入も積極的
日本保利化成は業界団体への加入にも積極的です。2025年3月には東日本プラスチック製品工業協会の賛助会員に、同年9月には日本不織布協会に入会しています。業界内でのつながりを広げている姿勢がうかがえます。
日本のプラスチックリサイクル、実態はどうなっているのか
リサイクル率87%の「中身」
日本のプラスチックリサイクル率は約87%(2022年度)。この数字だけ見ると優秀に思えますが、内訳を見ると景色が変わります。
| リサイクルの種類 | 全体に占める割合 | 内容 |
|---|---|---|
| サーマルリサイクル | 約62% | 燃焼して熱エネルギーとして回収 |
| マテリアルリサイクル | 約22% | プラスチック素材として再利用 |
| ケミカルリサイクル | 約3% | 化学的に分解し原料に戻す |
| 未利用(埋立等) | 約13% | リサイクルされず処分 |
全体の6割以上が「燃やして熱を回収」しているにすぎません。プラスチックを素材として循環させているのは全体の4分の1程度。欧州ではサーマルリサイクルを「リサイクル」にカウントしない国も多く、日本の高いリサイクル率は定義の違いに支えられている面があります。
海外輸出に頼れなくなった時代
かつて日本は、年間で大量の廃プラスチックを中国をはじめとするアジア諸国に輸出していました。しかし、2017年に中国が廃プラの輸入を禁止して以降、各国で輸入規制が広がり、このルートは急速に閉ざされていきました。
その結果、国内でプラスチックを循環させる仕組みの整備が急務になっています。2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行される予定で、一定規模以上の製造事業者に対して再生資源の利用計画策定や定期報告が義務づけられます。マテリアルリサイクルへの需要は、制度面からもさらに高まる見通しです。
こうした流れの中で、日本保利化成のような国内のマテリアルリサイクル専業企業の役割は、以前にも増して大きくなっています。
GRS認証取得が持つ意味
再生プラスチックの「信頼の証明」
再生プラスチック業界には、長年ひとつの課題がありました。品質のばらつきやトレーサビリティの不透明さです。「本当にリサイクル材が含まれているのか」「どの程度の品質が保たれているのか」を客観的に証明する手段が限られていた。
GRS認証は、この課題に対するひとつの回答です。リサイクル原料の出所から加工工程、最終製品に至るまでのサプライチェーン全体が第三者監査の対象になります。再生ペレットに含まれるリサイクル材の割合や品質が、国際基準で裏付けられるわけです。
自社で「品質には自信があります」と言うのと、第三者機関が監査した上で認証するのとでは、取引先から見た信頼度がまったく違います。
国際取引への道を開くパスポート
もうひとつ見逃せないのが、ビジネス面での実利です。
欧米の大手メーカーは近年、調達先にリサイクル認証の取得を求めるケースが増えています。特に自動車部品、家電、パッケージ素材などの分野で、GRS認証の有無が取引条件に直結するようになってきました。
日本保利化成は中国にグループ会社を持ち、再生原料の国内外販売を事業として掲げています。GRS認証を取得したことで、海外のサプライチェーンに組み込まれる可能性が広がります。
国内での取得企業はまだ少ない
日本国内でGRS認証を取得している企業を見ると、繊維業界では東レ(再生ポリエステル「&+」)、旭化成(再生繊維「ベンベルグ」「ロイカ」)、伊藤忠(「RENU」)といった大手の名前が並びます。プラスチックリサイクル分野ではパンテック社が先行事例として知られていますが、全体としてはまだ取得企業が限られている状況です。
そうした中で、従業員規模が大手とは異なる太田市の企業がこの認証を取得した事実は、注目に値すると感じました。太田市は古くから「ものづくりのまち」として知られており、日本保利化成株式会社の企業情報も太田市の産業情報サイトに掲載されています。地域のものづくり産業の一角を担う存在です。
GRS認証取得企業の比較
日本国内でGRS認証を取得している主な企業を整理してみました。
| 企業名 | 業界 | 認証取得製品・分野 |
|---|---|---|
| 東レ | 繊維 | 再生ポリエステル「&+」 |
| 旭化成 | 繊維 | 再生繊維「ベンベルグ」「ロイカ」 |
| 伊藤忠 | 商社・繊維 | 再生ポリエステル「RENU」 |
| パンテック | プラスチックリサイクル | PP、HDPE、PET、ABS等の再生原料 |
| 日本保利化成 | プラスチックリサイクル | 50種類以上の樹脂の再生ペレット |
繊維業界の大手が先行している中、プラスチックリサイクル分野での取得はまだ珍しく、とりわけ中小規模の企業による取得例は限られています。日本保利化成の取得は、業界全体にとっても意義のある動きです。
まとめ
日本保利化成のGRS認証取得について調べた結果、単なる認証取得のニュースにとどまらない背景が見えてきました。
日本のプラスチックリサイクルは、サーマルリサイクル偏重の構造から転換を迫られています。海外輸出規制の強化と法改正の動きがあり、国内でマテリアルリサイクルの品質と信頼性を担保する仕組みの重要性は高まる一方です。GRS認証の取得は、その文脈の中で意味のある一歩だと感じます。
50種類以上の樹脂に対応できる技術力と、国際認証による品質保証。このふたつを兼ね備えた再生プラスチック企業が群馬県太田市にあるという事実は、もっと知られていいのではないかと思います。



